2016/10/06
論文試験再現答案
皆様、こんにちは。 外苑前駅3番出口徒歩20秒、特許業務法人 IPXの奥村 光平(オクムラ コウヘイ)です。代表弁理士COO/CTOとして、CEOの押谷とともに当所IPXを経営しています。 IPXでは、"From XXTech to Academic Study" をポリシーに、創業当初より得意としていたベンチャー系テクノロジーから、大学・研究機関等での高度な専門性を必要とする学術研究に至るまで、多様な経歴を有するスタッフが、ソフトウェア・ICT分野(特に、AI, IoT,VR/AR, CV, 画像処理, ロボティクス, 無線通信, 制御等)の特許事案を、迅速かつ丁寧に対応いたします。「品質」と「スピード」とは徹底化されたIPX独自の3つのメソッドに基づくことで両立いたします(爆速知財サービス)。 辰巳法律研究所に提出したものです。 <>内は実際の点数(いわゆる偏差値)です。 特実に至っては、移転請求落とすし、均等論の要件5番目微妙に違うしww 特・実 <116点> 第1問 1. 設問(1)について (1)パリ条約では、内国民待遇を手続き面から実効あらしめるために、優先権制度を設けている(パリ4条B)。しかし、かかる制度をもってしても各国ごとに手続が異なり、出願人は各国ごとに出願書類を作成しなければならないため、負担が大きい。 (2)そこで、出願手続きを一本化し、一度の出願手続で出願の束として複数国に同時に出願をすることができる国際出願制度を採用し、出願人の負担緩和の実効を図った(PCT)。 (3)本制度によれば、一度の出願手続きで複数国の出願日を確保することができる。 2.設問(2)について (1)甲は、乙及び丙に発明イについて特許を受ける権利を譲渡しているため、いわゆる二重譲渡が行われている。ここで、特許出願前の特許を受ける権利の承継は、出願が第三者対抗要件である(34条1項)。なぜなら適当な公示手段が他になく効力発生要件とすると出願前の承継が不可能となるためである。 (2)したがって、出願をしている丙は乙に対して題意の主張をできる。 3.設問(3)について (1)法は、重複特許を排除するため、同一発明が出願されたときは最先の出願人のみが特許を受けられる旨を規定している(39条1項)。本設問において、丙は出願A1をしており、かかる出願の出願日は国際出願日である(184条の3第1項)。 (2)一方、出願B2における発明イは、先の出願B1にも記載されており優先権の効果が得られ、発明イに係る後願排除基準日は、先の出願B1の時である。 (3)したがって、同一の発明イについて一見すると出願B2は出願A1の引用例となり拒絶理由を通知されうる。しかし法は、先願が特許とならない場合は先願の地位を有さないと規定している(39条5項)。また出願B2は丁による冒認出願である。よって出願B2は、拒絶理由を有する(49条7号)ため特許されず引用例とはならない。よって拒絶理由は通知されない(50条)。 4.設問(4)について (1)分割出願 出願A1の出願人である丙(44条1項柱書)は、出願A1に記載された発明ロを特許請求の範囲に記載して、出願A1を原出願とする分割出願を、拒絶査定謄本送達から3月以内(44条1項3号)にしうる。発明ロについて特許権を取得するためである。 (2)出願審査請求 丙は、上記分割出願について原出願A1から3年以内に出願審査請求をしうる(48条の3)。発明ロについて実体審査に係属させるためである(48条の2)。 5.設問(5) (1)丙は、戊に対して相手方を特定して警告をした後、補償金請求権を行使し得る(65条1項)。かかる制度は出願公開により第三者に発明を実施されたことによる出願人の損失を填補するためのものである。 以上 第2問 1. 設問(1)について (1)特許権の侵害とは、権原又は正当理由なき第三者による業としての特許発明の実施又は一定の予備的行為をいう(68条、101条)。 (2)甲の特許発明イに係る特許請求の範囲は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレームである。このような請求項は、ものを特性又は構造によって特定することが不可能又は非実際的である等の事情がある場合は、最終的に得られた生産物自体を示す。 (3)したがって、上記に該当する場合、「工程αの後に工程βを行うこと」を含まない場合であっても、特許権Pの効力は製品A1に及ぶと解する。 (4)なお、上記事情がない場合は、不明確なものとして法36条6項2号違反の無効理由を有するものといえる(123条1項4号)。 2.設問(2)について (1)製品A3は、特許発明イとは異なりd1又はd2を有さずd3を有するものである。権利一体の原則より、発明特定事項の全てを具備しない場合は、直接侵害を構成しない(68条)。 (2)しかしながら、下記の要件を満たす場合は、特許発明イと均等なものとして均等侵害を構成する。 (3)i)特許発明と異なる部分が発明の本質的な部分でなく、ii)異なる部分に置き換えても特許発明の目的を達成し、同一の作用効果を奏し、iii)当該置換えが、対象製品の製造時に当業者が容易に想到するものであり、iv)対象製品が、出願時の公知技術又は当業者がこれから容易に推考することができるものではなく、v)対象製品が、特許発明の技術的範囲から意識的に除外される等の特段の事情もない。 (4)製品A3が上記5要件を満たす場合は、侵害を構成するため、甲が製品A3の製造販売の差止め(100条1項)を求めることができる。 3.設問(3)について (1)本設問に係る場合、d3が特許請求の範囲から意識的に除外されているので、設問(2)で述べた第5要件を満たさないと解する。したがって、均等侵害を構成せず、製品A3の製造販売を差し止めることができない。 4.設問(4)について (1)題意より特許権Pは、特許出願Xを先の出願とする国内優先権主張を伴う出願Yによって得られたものである。しかし、クリップcは先の出願Xに係る明細書等に記載されていないため、クリップcを構成要素に含む特許発明イは、優先権権の効果が得られず判断基準日が出願Yの現実の出願日である。 (2)そして、出願Yの出願日よりも前に、丙は、インクa、収容部b、ペン先d2を備えた製品A2を販売しているので、これらの構成要素については新規性を喪失している。また、クリップcは出願Xの出願前からの周知技術である。 (3)上述の検討の結果、乙は侵害訴訟において、特許権Pが進歩性違反(29条2項)の無効理由(123条1項2号)を有する旨を主張しうる(104条の3)。 5.設問(5)について (1)甲は、優先権の効果が適法に認められる旨を主張しうる。 (2)甲は、訂正審判(126条)を請求し訂正の再抗弁をしうる。訂正の再抗弁が認められるには、i)特許庁に対して適法な訂正手続が行われ、ii)当該訂正によって乙の主張する無効理由が解消し、iii)訂正後の発明の技術的範囲に、対象製品であるA2が含まれることが必要である。 (3)よって、甲はこのような要件を満たす適切な訂正を行い、訂正の再抗弁をしうる。 以上 意匠 <61点> 【問題I】 1.双方で保護されうる理由について (1)特許法では、技術的思想の創作たる発明を保護対象としている(1条)。意匠法では、物品の美的外観たる意匠を保護対象としている(1条)。このように両者の保護対象は異なるもののいずれも創作物を対象としている点で共通する。 (2)本設に係る容器は創作物であり、凹凸形状により手で掴んだ際に変形しないという技術的特徴があり、特許法の保護対象である。また、当該容器は法上の物品であり、全体形状が斬新であるため視覚を通じて美感を起こさせるものであるから、意匠法の保護対象である。なお、例えば凹凸形状の部分について等は部分意匠の保護対象ともなりうる。 2.保護の態様について (1)全体意匠(2条1項) 当該容器は、全体形状が斬新なので全体意匠として保護されうる(2条1項)。全体意匠を出願する際は、願書及び願書に添付した図面等によって意匠を特定して出願すべきである(6条1項)。 当該容器そのものについて意匠権を取得できるというメリットがある(23条)。しかし、独創的で特徴ある部分を取り入れ意匠全体としては侵害を避ける巧妙な模倣を排除することができないというデメリットがある。 (2)部分意匠(2条1項かっこ書) 当該容器は、例えば凹凸形状について部分意匠として保護されうる(2条1項かっこ書)。部分意匠出願では、願書に部分意匠の欄を設ける(6条1項)。 上述の全体意匠のデメリットを解消し、模倣から適切に意匠を保護することができるというメリットがある。しかし、部分意匠と認められるためには、物品の外観における1つの閉じられた領域且つ他の意匠に係る物品の対比の対象となりうる部分でなければならない、というデメリットがある。 (3)関連意匠(10条) 当該容器は2種類あり両者は凸部の配置が若干異なるもので類似すると考えられる。なお、意匠の類否判断は、需要者の美感を基準(24条2項)として、両者について物品・形態の認定、共通点と差異点の認定とその個別評価をし、意匠全体として総合的に観察することで判断される。 関連意匠出願とすることで、類似の意匠についても法9条1項、2項等の適用を回避することができるというメリットや(10条1項)、本意匠だけでなく関連意匠に基づいて権利行使をすることができるというメリットがある。しかし、意匠権の移転について本意匠と関連意匠とを分離移転できない(22条1項、2項)、専用実施権の設定に制約がある(27条1項ただし書)等のデメリットがある。 (4)秘密意匠(14条) 当該容器は、秘密請求期間を2年として秘密意匠として保護されうる(14条)。これにより、実施時期と公表時期との整合を図ることができるメリットがある。しかし、善意の実施者に苛酷にならないように、差止請求権(37条)を行使する際に事前の警告を要することや(同3項)、損害賠償請求訴訟(民709条)では、過失の推定が適用されない(40条ただし書)等のデメリットがある。 【問題II】 1.法目的について (1)法は、意匠を保護することで新しい意匠の創作を奨励している(1条)。また、優れた意匠を製品に応用することで、需要増大させることができる(同)。更に、意匠権を付与することで模倣を防止し、競業秩序の維持を図っている(同)。 (2)以上の3つの観点から意匠を保護することで産業の発達に寄与することを目的としてる(同)。 2.類似意匠に及ぶ趣旨 (1)意匠は物品の美的外観(2条1項)であり、同一範囲が狭く模倣がされやすい。仮に登録意匠と同一の意匠のみを保護対象とすると、意匠が適切に保護されないことになる。そこで類似の概念を導入し、意匠権の効力は登録意匠に類似する意匠にも及ぶとし、意匠の保護の実効を図っている(23条)。 (2)このようにすることで、意匠が適切に保護され上述の法目的を全うし、産業の発達に寄与することができる(1条)。 3.意匠の類否判断が需要者を基準とする趣旨 (1)意匠の類否判断とは、意匠権の効力範囲等、意匠権の根本を司るものであるから、統一的な判断をもってなされることが望ましいと考えられる。そこで、これまでの最高裁判例等を鑑みて、当業者ではなく需要者の美感を基準として、意匠の類否判断を行うものとした(24条2項)。 (2)なお、全体意匠に係る類否判断であれば、需要者の美感を基準として(同)、物品と形態の認定、共通点と差異点の認定とその個別評価を行い、意匠全体として総合的に観察することで判断されるものとしている。 (3)一方、部分意匠では、需要者の美感を基準として(同)、物品の類否、部分についての機能、用途、形態の類否、部分についての位置、大きさ、範囲がありふれた範囲内でないかを鑑みて、意匠全体として総合的に観察することで判断されるものとしている。 以上 商標 <58点> 【問題I】 1.設問(1)について 「商品及び役務の区分」とは、出願に際して、商品役務の性質等を考慮して決定した形式的な分類である(6条2項)。また、区分は商品役務の類似範囲を定めるものではないことが確認的に規定されている(6条3項)。すなわち、区分と商品及び役務の類似の範囲とは関係がない。 2.設問(2)について (1)出願時 願書で指定商品、指定役務を指定して区分に従って商標登録出願を行う(6条1項、2項)。ここで指定商品、役務を指定しなかった場合は、出願日が認定されず補完命令の対象となる(5条の2第1項4号)。なお、区分のみが記載されていない場合は、出願日は認定されるが補正命令の対象となる(準特17条3項) (2)審査、審判時 審査や審判において、指定商品、役務を鑑みて登録の是非を判断するものがある(4条1項10号、11号、12号、14号等)。 (3)登録後 登録後には、商標権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用を専有する(25条)。また、登録後に行われる審判では、請求の取消を指定商品役務ごとにできるものとそうでないものがある。前者は、商標登録無効審判(46条)であり、後者は不使用取消審判(50条)や法51条、52条の2、53条、53条の2の審判等がある。 【問題II】 1.設問(1)について (1)法4条1項12号では、他人の登録防護標章と同一の商標であって同一の指定商品役務について使用するものは、登録を受けられない旨を規定している。題意より本拒絶理由が妥当であるから、甲の商標イと乙の登録防護標章ハと、これと同一の商標ロとはすべて同一である。 (2)甲は、応答期間内に出願Aにおいて指定商品bを削除する補正をしうる(68条の40)。法4条1項12号の拒絶理由を解消し、指定商品aのみについて商標登録を受けるためである。なお、当該補正は指定商品を減縮する目的のものであり、要旨変更には該当しない(16条の2)。 (3)また甲は、意見書を提出し、上記補正により拒絶理由が解消した旨を主張しうる(15条の2)。 2.設問(2)について (1)法8条1項は、同一類似の商標について同一類似の指定商品に対して使用するものは、最先の出願人のみが商標登録を受けられる旨を規定している。無効理由であり後願過誤先登録された場合に対応するための規定である。 (2)甲の商標イは、X国における商標登録出願を基礎とするパリ条約に基づく優先権主張を伴うものであるため、第1国出願日が商標イの後願排除基準日である(パリ4条B)。 (3)一方、乙の商標ロは、Y国における商標権を基礎とする国際登録について、日本を事後指定する商標登録出願Bによるものである。したがって、事後指定の日が、商標ロの後願排除基準日である(68条の9第1項)。 (4)以上検討より、甲の商標イと同一の乙による商標ロは後願過誤先登録されたものであり、法8条1項の無効理由を有する(46条1項1号)。 (5)商標ロについて利害関係を有する甲は、商標登録無効審判を請求し、商標ロを無効としうる(46条1項1号)。なお商標ロの設定登録日から5年を経過しておらず除斥期間の対象ではない(47条1項)。無効となった場合は、商標ロははじめからなかったものとみなされる(46条の2)。 (6)更に商標ロの消滅にともない、登録防護標章ハも消滅する(66条3項)。これにより、法4条1項12号の拒絶理由が解消し、甲は商標登録出願Aについて指定商品a、bの双方について登録をうけうる。 (7)甲は、意見書を提出し拒絶理由が解消した旨を主張しうる(15条の2)。 以上 スポンサーサイト
姉妹ブログ: 爆速!知財のIPX(当所CEO 押谷)もよろしくお願いします。 |
コメント